2025/06/02 10:54
今回は中国ワインによく使われるブドウ品種「蛇龍珠Cabernet Gernischt(カベルネ・ゲルニッシュト)」について紹介します。実は中国でも「蛇龍珠」に関する情報が少なく、記事によって矛盾している情報も少なくありません。本文は資料だけでなく、長年中国でワインを醸造しているワインメーカーさんにも色々質問しました。
歴史と起源
- 中国への導入:蛇龍珠は1892年に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」によってフランスから中国に導入されました。当初はカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)やカベルネ・フラン(Cabernet Franc)の姉妹品種と考えられていました。
- 名称の由来:「Cabernet Gernischt」という名称は、ドイツ語の「Cabernet Gemischt」(混合されたカベルネ)の誤表記である可能性があり、長い間でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの交配品種だと思われていました。
- 遺伝子研究:2008年の寧夏大学の研究と2011年のスイスの科学者José VouillamozによるDNA解析により、蛇龍珠はカルメネール(Carmenere)と遺伝子的に同一であることが確認され、中国に適応したカルメネールの変種である可能性が示されました。
品種の特徴
- 外観と成長:蛇龍珠の果実は紫黒色で、比較的小さく、紫黒色をしており、房は中程度の大きさです。果皮について薄いと厚い両方の資料がありますが、各産地のワインメーカーによると地域によって厚さが異なることがわかりました。例えば新疆ウイグルの天山北麓産地ではカベルネ・ソーヴィニヨンの皮より厚いです。果実が成熟すると、濃厚な果実の香りを放ち、カシス、チェリー、プラムなどの黒系果実のアロマが感じられます。
- 成熟期:蛇龍珠は中晩熟品種で、芽吹きから果実の完熟まで約138日かかる。カベルネ・ソーヴィニヨンより早く、9月上旬から収穫し始めます。
- テロワール適応性:蛇龍珠は中国の土壌や気候に対する適応力が高く、山東、寧夏、河北、新疆ウイグルなど中国多くの地域で栽培しています。
ワインの特性
- 典型的な香り:蛇龍珠のワインは、ピーマン、カシス、ラズベリー、赤系果実、黒胡椒、ハーブ、マッシュルームなどの香りを持っています。
- ワインのスタイル:ミディアムボディで、タンニンは繊細、酸味は活き活きとしており、ジューシーな口当たり。赤系果実や甘いスパイスの複雑な風味が特徴です。
- カルメネールとの違い:遺伝的にはカルメネールと同一だが、中国の風土に長年適応した結果、チリ産のカルメネールとは異なるワインスタイルを持っています。
つまり、現在最も有力な説は、「蛇龍珠」は「カルメネール」と同じ品種です。しかし、100年以上中国で栽培している間で、中国の気候風土に適応して独自の特性が生み出され、一部の専門家から蛇龍珠は中国の土着品種に認定すべきの声も上がっています。